日本の社会はこれまでに例をみないスピードで超高齢社会を迎えようとしている。現在を生きる私たちは、近い将来、必ずや訪れるであろう、自分たちの介護する姿と介護される姿を想像し、今から覚悟して備える必要がある。

 問題を一層複雑にしているのは、認知症の方の割合が高齢者で非常に増加することだ。すでに65歳以上の4人に1人が認知症と言われている。

 だが現状、私たちはどれだけ「認知症」について正しく理解できているだろうか。老化、物忘れと認知症の違いは? うつ病と認知症の違いとは? 予防策はあるのか?

 そこで、まず、現状私たちが置かれている状況を把握した上で、認知症のメカニズムや症状について詳しく見ていくことにする。

「逆・老々介護」も起こり得る

 すでに団塊の世代が65歳以上の高齢者となり、社会全体の25%を占めている。20年も経てば、団塊のジュニア世代も65歳以上に仲間入りし、2050~2060年には65歳以上の高齢者は約40%に達すると見込まれている。

 厚生労働省の発表によると、日本人の平均寿命は2012年時点で、男性80歳、女性86歳。だが、自立した生活を送ることができる「健康寿命」となると、男性70歳、女性74歳で、平均寿命とは10年前後の差がある(図1)。

図1. 健康寿命と平均寿命の差、男女別、2010年。(平成26年版厚生労働白書 第2章「健康をめぐる状況と意識」より)

 この“不健康な期間”に多くの高齢者は何らかの疾患を抱え、介護を必要としながら寿命を迎えることになる。さらに2014年の平均寿命は、男性81歳、女性87歳となり、過去最高を更新している。