災害時に救助の主役となる自衛隊ヘリコプター。しかし国民の理解は十分得られていない(写真は2015年の台風18号で被災した人を救助した際、写真:AP/アフロ)

 台風19号により、長野県を流れる千曲川の堤防が決壊した。家族ら3人が避難した2階まで泥流が迫り、家屋を呑み込む危険が迫っていた。

 雲は低く垂れこめていたが、自衛隊のヘリコプター「ブラックホーク」が低空飛行で現れ、その3人をロープで吊り上げて救助した。

 自分の命が危機に陥れば、一刻も早く救助に来てほしい。誰もがそう思う。悪天候や夜間でも、派遣されるのは自衛隊のヘリや救難飛行艇だ。

 だが、いつでも、どこにでも、短時間で、派遣されるかと言うとそうではない。

 救助を求める場所がヘリ基地の近傍にあれば、短時間に到着できるが、基地から遠いと、時間がかかる。

 経路上の山に厚い雲がかかっていれば、救助を諦めて、途中で引き返さなければならないこともある。

 台風による災害が広域に発生した場合、特に悪天候であればあるほど、航続距離が長く、高性能の「ブラックホーク」による救助活動が効果的だ。

 私は、空挺部隊の降下長(Jump Master)の資格を持ち、かつヘリ偵察の経験者として、救助するヘリについて紹介したい。

 なぜなら、この救助活動は、淡々と実行されているようだが、実は悪天候などの場合には、このヘリのパイロットも救難員も、誤れば死という境界で行動しているからだ。