殻が固い鶏の卵は、恐竜から受け継いだものだった

生物進化を食べる(第7話)鳥類篇

2019.10.25(Fri)大平 万里

 そして、乾燥や感染に対する仕組みが、卵内への微生物の侵入をほぼ許さず、長期間の常温保存を可能にしている。魚卵のように冷蔵庫に保管しなければ腐ってしまうようでは、これほど安価に安定供給できる食材にはなりえないだろう。

 生物の卵を現在の鶏卵らしくさせた三畳紀の恐竜の努力が、奇しくも私たちの食生活を豊かにすることに大いに貢献したのである。

恐竜から鶏へ、卵もバトンを受け継いだ

 だが、たしかに卵の外見がいくら鶏のものに似ているといっても、その卵は恐竜のものであるから、冒頭の命題の「卵」とはいえないような気もする。

 しかし、すでにご存知の方も多いだろうが、現在の鳥類は恐竜の生き残りなのである。分子系統的には約1億7000万年前の中生代ジュラ紀中期に、恐竜の獣脚類のうち「マニラプトル形類(けいるい)」というグループから現在の鳥の祖先が分岐したことが分かっている。

オヴィラプトルの化石と想像図。

 実際、約8000万年前の白亜紀後期に存在したマニラプトル形類の一種「オヴィラプトル類」には、卵を守るような体勢の化石が発見されており、現在の鳥と同じように抱卵していたのではと考えられている。そして抱卵するということは、羽毛を備えていた恒温動物であった可能性も高い。想像図を見てのとおり、鳥類と同じ二足歩行である。

 また、化石に微量に含まれていた色素の分析から、卵は青緑色をしていたとも推測されている。現生の生物で、殻に色素を含んだ卵を産むのは鳥類のみだ。もし、想像図のような生物が庭にうろついていたら、ほとんどの人は動物園から七面鳥みたいのが逃げてきたと思うことだろう。

 栄華を極めた恐竜のほとんどは中生代末に絶滅してしまうが、わずかに生き残った種が鳥類として現在も繁栄しており、鶏もその中のひとつである。つまり、鶏の卵も中生代の恐竜から生命のバトンを代々受け継いで現在に至っているわけで、私たちは日々恐竜の卵を食べているといっても間違いではないのである。

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