内閣府試算が警鐘を鳴らす金利上昇

 金利が上昇すると、債権者(資金を貸している者)は受け取る利息が増えるが、債務者(資金を借りている者)は支払う利息が増える。日本最大の債務者は日本政府である。今年3月末で、合計1103兆3543億円の債務を抱えている(内訳は、国債の残高が976兆8035億円、借入金が53兆2018億円、政府短期証券(短期国債)が73兆3490億円である)。さらに政府が保証している債務が38兆1087億円ある。

 債務がこれだけ巨額だと、金利が人類史上かつてない異常な低水準であっても、債務の償還(払い戻し)・利払い・借り換えなどの費用の合計である「国債費」は、財政運営において無視できないほど大きくなる。

 実際、国債費は、令和元年予算で23兆5082億円が計上されている。これは前年度より2062億円増加しており、101兆4571億円の一般会計予算総額の23.2%を占める。

 つまり、政府の一般会計からの支払いの約4分の1は、債務の返済、利払いや借り換えのための国債費に当てられているのである。もし万一、国債費の支払いが1円でも不足したり1日でも遅れたりすると、日本政府は債務不履行(デフォルト)したことになってしまう。

 金利が上昇すると財政の「自転車操業」は一段と苦しくなる。新規に発行する国債の利払いが増えるだけでなく、過去に低い金利で発行した国債を借り換えると金利が高くなってしまうからである。

 実際、安倍総理が議長を務める経済財政諮問会議で、内閣府が『試算』を報告する際に用いたと思われる全4ページのレジュメ『中長期の経済財政に関する試算(2019年7月)のポイント』には、「長期金利の上昇に伴い、低金利で発行した既発債のより高い金利による借換えが進むことに留意が必要である」という注が記されている。