超低金利を前提に資金を借り入れ長期のローンを組んだ人達は本当に大変なことになるだろう。住宅ローンを払えなくなりマイホームを手放す家庭が出てくるだろうし、人口減少による人手不足は深刻となるばかりだろうから、本業の利益から金利を支払えなくなるゾンビ企業が続出するだろう。
安倍総理は「悪夢のような民主党政権」と呼んだが、内閣府の『試算』が正しいとすれば、「悪夢のような自民党政権」だったと言われる日が近未来に待ち受けていることになる。
自民党政権が「悪夢」と言われないために・・・
10月からの消費増税の影響を考慮するために、景気の現状について見ておこう。
【図4】は、「景気の現状判断」そして「景気動向指数」のそれぞれの推移を描いたグラフである。
コンビニ店長、スナック経営者やタクシー運転手といった景気動向に敏感な様々な職種2050人を内閣府が毎月調査している「景気ウォッチャー調査」によると、「景気の現状判断」は2018年1月から横ばいを示す50を下回り、低下し続けている。これは、「景気が良い」と感じている人よりも「景気が悪い」と感じている人の方が増え続けていることを示している。
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一方で、各種の経済指標を集計して作成される「景気動向指数」のうち、景気動向とほぼ一致して動く「一致指数」は2018年4月から下落基調である(【図4】の青い曲線)。景気動向に遅れて動く「遅行指数」は高止まっている(【図4】の緑の曲線)。しかし、景気動向に先行して動く「先行指数」は2018年6月から下落基調である(【図4】の赤い曲線)。
こうした局面で、今年10月に消費税率を10%に引き上げることは、2017〜9年の世界金融危機の時のように3種類の景気動向指数が一斉に低下する本格的な景気後退を招きかねない。
だからこそ、安倍総理は消費税率引き上げを再延期して、「国民に信を問う」として衆議院を解散し、衆参同日選挙に持ち込むのではないかと盛んに観測されていた。
しかし、安倍総理は解散を回避し、消費税率を予定通り今年10月1日に引き上げることを選択した。消費税率を引き上げれば、2014年のように景気が大きく腰折れし、「成長実現ケース」どころか「ベースラインシナリオ」も達成できなくなり、金利が上昇し(国債価格が下落し)続け、「悪夢のような自民党政権」と言われる日が来るのを先延ばしできる・・・。3年に1度しかない衆参同日選挙のチャンスを安倍総理が敢えて捨てたのは、そうした深慮遠謀があったのかもしれない。
だが、1100兆円を超えて膨らみ続ける政府債務の途方も無い巨大な「山」が永遠に崩壊しないまま持続するという保証はどこにもない。財政のあり方を現状のまま放置していれば、いつか「山」は崩壊し、制御不能な事態がやって来ることを、日本の全ての政治家は覚悟しなければならない。
だからこそ自民党は、「国債価格が急落するという悪夢」が起きる「X-day」に「政府・日銀や市場関係者がとるべき対応」をまとめた『X-dayプロジェクト報告書』を、「悪夢のような民主党政権」下の2011年にまとめたはずだ。
『X-dayプロジェクト報告書』には、「債務残高が大きく、金利上昇に脆弱な我が国で仮に金利が上昇すれば、危機が急速に深刻化するおそれがある」と明記されている。それか
「X-day」を先送りするのではなく、政府債務の「山」そのものを何とかする「痛みを伴う改革」を行うのは、自身の結婚を総理官邸で発表しても少しも奇異とされないほど総理就任が強く待望されている小泉進次郎こそが取り組むべき第一の課題であるだろう。
(文中敬称略)