助けた相手が助けてくれる、といった小さく閉じた関係性の話ではない。ルーズなコミュニティーだからこそ成立する原則だ。時には騙されて大損することもあるだろう。しかし、トータルとしてこの原則が成立していさえすれば、安心して生きていける。それも周囲に親切を振りまきながら。

 これまでに論じられてきた「贈与」や「分配」などについての一般論とは異なっている。このあたりについては、さすが専門家、文化人類学的な考察が十分になされていて、その方面での興味は尽きない。といっても、決して難しくはないのでご安心を。

 香港に流れてきたタンザニア人による特殊なシチュエーションでの経済といってしまえばそれまでのことかもしれない。しかし、「ついで」と「信頼しないけれども、信頼する」という二つのキーワードで成り立った世界は、けっこう生きやすそうではないか。なによりも、そんな経済のど真ん中で生き抜いているカラマはとっても幸せそうだし。いやぁ、チョンキンマンションのボス、絶対にあなどれませんわ。

21世紀の楕円幻想論 その日暮らしの哲学
作者:平川克美
出版社:ミシマ社
発売日:2018-01-29

貨幣経済の世の中でいかに生きていくべきか。自分の中に二つの焦点を持つことが大事と説く。

 

転がる香港に苔は生えない (文春文庫)
作者:星野 博美
出版社:文藝春秋
発売日:2006-10-06

香港といえば、この本をあげずにはおられません。

 

仲野 徹
1957年、「主婦の店ダイエー」と同じ年に同じ町(大阪市旭区千林)に生まれる。大阪大学医学部卒業後、内科医から研究の道へ。京都大学医学部講師などを経て、大阪大学大学院・生命機能研究科および医学系研究科教授。専門は「いろんな細胞がどうやってできてくるのだろうか」学。 http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/labs/nakano/ ノンフィクション、とりわけ伝記が好き。それが昂じて専門誌に「なかのとおるの生命科学者の伝記を読む」を連載。単行本(学研メディカル秀潤社)として上梓したところ、成毛代表の目にとまりHONZに参加。書籍購入費の抑制、および、仕事と飲酒と読書のバランスとれた鼎立、が永遠の課題。

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