“困ったことがあったら、チョンキンマンションに行ってカラマを探せ”

 タンザニアからやってきた交易人は、まずこう教えられるほどの存在である。なんとも魅力的な人物ではないか。割愛するが、この本で紹介されているその人生行路はかなりのものだ。

彼らの仕事の基準は「ついで」

 そのチョンキンマンションのボスの周辺で、タンザニア人たちは何を考え、どのように行動し、生きているのだろう。キーワードは以下の二つ。
「ついで」 そして
「信頼しないけれども、信頼する」
なんやねんそれは、と言われそうだが、つきつめるとこの二つになるのだからしかたがない。

 まずは「ついで」。カラマも周りの人も、遊びながら仕事をしているように見える。これは、彼らの社会的なコミュニケーションとビジネスが渾然一体になっていて、彼らの仕事の基準が「ついで」にあるからだ。

本コラムはHONZの提供記事です

 小さいがわかりやすい例でいくと、タンザニアと香港を行き来する人のスーツケースに空きがあれば、自分取り扱う商品をついでに仕入れてきてもらう、といったようなことだ。このような「ついで」を用いると、結果的に、負い目を感じずに気軽に助け合うことができる。このような仕組みで、カラマの周囲の経済は成り立っている。

 しかし、次に書くように、基本的には誰も信頼できない、ということを忘れてはならない。時にはだまし取られることもあるし、違法な運び屋に仕立て上げられてしまう危険性もある。ちょっと怖すぎるけれども、まぁ、そこはある程度仕方ないというだろう。

“大切なのは仲間の数じゃない(タイプのちがう)いろんな仲間のいることだ”

 詐欺にあった時に最も役立つ情報を与えてくれるのは、警察などではなく詐欺師である、など、カラマの哲学はあくまでも明快だ。

 驚くような個々のエピソードは本を読んでもらうしかないが、成功するには、いかに「ついで」にうまく便乗するかが大事だ。なにしろ、そんな「ついで」の連鎖によって、政府高官から元囚人にまでいたるカラマの人間関係はできあがってきたのである。