「中央権力に盾突く行動は、絶対に許さない!」
2017年7月1日、香港返還20周年式典で中国の習近平国家主席は、そう豪語した。
これを受け、香港の宗主国、英国のフィナンシャル・タイムズ紙は、同月3日、次のような寄稿記事を掲載した。
「英国領だった香港の『返還後第一世代』の若者を中心に、中国人ではなく『香港人』としてのアイデンティティーを香港人が強く主張し始めた」
「その背景にあるのは、中国政府の香港人の生活様式に対する締め付けだ。明らかな強硬統制は一層の(中国からの独立を要求する)運動を先鋭化させる」
この時点で、2年後の今回の大規模デモを予測していたかのような寄稿である。
寄稿者は、2014年の香港民主化デモ「雨傘運動」の元リーダー、黄之鋒氏(22歳)だ。
香港市民の独立の動きに強硬姿勢で臨む中国政府を痛烈に批判し、黄氏は「本当に問題なのは『一国二制度』の期限が切れる2047年に何が起きるかだ」と言い、次のように対中抗戦を訴えた。
「天安門事件以降、香港上海銀行がロンドンに移した本社を香港に戻さないのは、香港が将来、大きな不安を抱えてるからだ」
「中国人は自信過剰となった過去の失敗から学び、香港人は将来の自由を(自分たちで)決めなければいけない」
今回の反政府デモでも指導者的役割を担う黄氏は2011年、学生団体「学民思潮」を設立。
2012年、香港政府が中国人としての愛国心向上を狙った「道徳・国民教育」を小中学校で義務化する方針を示した際、反対する抗議活動を指揮し、政府方針を撤回に追い込んだ経緯がある。
中国公安当局が「過激な危険分子」として最も警戒する人物だ。