(舛添 要一:国際政治学者)
今年の夏の猛暑には、世界中が音を上げている。ヨーロッパがとくに酷い状況で、パリでは7月25日に42.6℃と観測史上最高の気温となったが、フランス南部では、6月28日に45.9℃というフランス本土での最高気温を記録している。私は、若い頃パリに住んでいたが、真夏でも30℃を超える日はあまりなく、乾燥した気候なので木陰では涼しく、クーラーなど設置している家はなかった。
今年の猛暑は他の欧州諸国も同様であり、40℃を超える日が続いたため、日照りが酷すぎて乾燥し、小麦、トウモロコシ、空豆などの農作物が正常な生育ができず、甚大な被害を出している。
猛暑による経済損失は2030年までに250兆円
フランスでは、猛暑で死ぬおそれがあるため、午後1〜6時まで家畜の輸送を禁止した。また、熱波の影響で複数の原子炉を停止したが、それは温められた原発の冷却水が近隣の川に流されると水温の上昇を招き、生態系に変動を来すからである。
イギリス、フランス、スイスでは、暑さで鉄道の線路が歪み、列車の運行速度を落としたり、高速鉄道の運行停止に踏み切ったりした。ベルギーの首都ブリュッセルでは外で働く公務員の業務を中止したが、国際労働機関(ILO)によれば、猛暑で労働時間が減り、2030年までに世界で2兆4000億ドル(約250兆円)の経済損失が生じるという。