ヤマトが業績を回復させるためには、採算ラインまで配送個数を増やす必要があるが、価格を下げてしまっては、元の木阿弥である。今年10月には消費増税が控えており、個人の依頼も低調に推移する可能性が高く、正社員を2万人も増やしてしまった以上、コスト削減にも限界がある。市場では、業績の低迷が長期化するリスクも意識され始めている。

 運送事業というのは、十分なインフラや人員がいないと機能しないビジネスなので、ある程度、先行投資が必要であることは言うまでもない。だが、こうしたインフラはすぐには変更できないため、需要をどう予測するのか、あるいは人員をいかに柔軟に配置するのかが重要なカギを握る。

 米FedExや米UPSなど、米国の大手運送事業者は、クリスマスなど需要が急増する時期には、臨時の配送要員に極めて高い賃金を払うことで、一時的に大量の人員を確保し、急増した需要に対処するといった取り組みを行っている。

 ヤマトの経営陣は、人手不足からネット通販の配送が滞るといった事態が発生した時も、そして、値上げを実施した今回も、依託される荷物の個数について予測を誤っている。これは運送事業者の経営者としては致命的な問題といってよい。

 さらにいえば、同社は人手不足問題をきっかけに、大量の正社員を雇用するという形で体制の強化に乗りしたが、これは固定費の増加を意味している。一旦採用した正社員を減らすのは容易なことではなく、今後の需要動向によっては、高い人件費が同社経営の足かせとなる可能性がある

 二度も需要予測の失敗が続くということなると、市場は経営陣の能力について疑問視せざるを得なくなる。市場からの信頼を回復するためには、大口顧客の需要動向について、もっと詳細な情報を開示していく必要があるだろう。