良い会社の条件とは何か。給料が高い、経営が安定している、将来性が高い、世界展開している・・・。働く人によって、あるいは環境の変化で大切な条件は変わる。
しかし、時代が変わっても多くの人に賛同される条件が1つある。それは働く人を育てる会社かどうかである。
「人を育てる」というとパナソニックの創業者である松下幸之助を思い浮かべる人が多いと思うが、これは決して終身雇用を前提とした古い企業理念ではない。
たとえわずかな期間でも、会社に在籍した人にチャンス、つまり成長の機会を与えられれば、間違いなく会社の成長につながる。
その社員に辞められたとしても、そこで得られた成功体験は社会に還元されるわけで、会社として社会に貢献したことにもなる。
先日友人に誘われ、東京・新丸ビルに入っている「RIGOLETTO(リゴレット)」というレストランへ行った。
東京駅の目の前の一等地で、おしゃれなレストランなのに、例えばタパスが一皿500円ちょっとと手頃で、どれも美味しい。
安くて美味しいだけではない。テーブルを担当する店員の気配りが心憎い。目が合うだけでこちらの気持ちを察し、ワインリストなどを持ってきてくれたりする。
職業病でこのような場合、ついつい質問を浴びせてしまう。聞くと、ここの前には超一流ホテルで働いていたという。顧客サービスについてもっと自分で考え実践できる場として転職してきたそうだ。
なるほど。それは面白い・・・。
このレストランを予約してくれた友人は、いくつもの飲食店の社長経験があり、現在は飲食業コンサルタントをしている。その彼に聞くと、この店の経営者はかつては「伝説のサービスマン」で、現在は独立して優良企業を創り上げた、業界では知らない者はいない存在だという。
しかも、その友人が知り合いだという。間髪入れずに彼を通して取材を申し込んだ。
その人がHUGE(ヒュージ)という会社を率いる新川義弘さん。
業界大手グローバルダイニングに長年勤め、有名経営者の長谷川耕造氏の右腕として同社の成長を牽引した。
2002年にジョージ・W・ブッシュ大統領が来日し、小泉純一郎首相と西麻布の「権八」で夕食をとった際、接客に当たったことでも知られる。
そのグローバルダイニングからなぜ独立を決め、起業することにしたのか。HUGEは何を目指しているのか。レストラン経営の根幹とは何か。たっぷりと話を聞く機会を得た。
インタビュー:川嶋諭、編集:松浦由希子