殻の脱皮で巨大化へ、生存競争に勝ったエビとカニ

生物進化を食べる(第4話)節足動物篇

2019.07.26(Fri)大平 万里

 脱皮中に襲われるリスクをあえて取っても、脱皮によって急速に巨大化できるということは生存競争では有利であっただろう。実際、第2話の棘皮動物篇で紹介した「アノマロカリス」の仲間は、カンブリア紀の大爆発で登場した動物の中でも桁違いに大きい。といっても1m弱程度だが、当時の他の動物の大半が数cm程度であることを考えれば、十分に巨大である。

エビからヤドカリ、そしてカニへ

上から、ヤドカリの一種、タラバガニ、ズワイガニ。タラバガニ(鱈場蟹)は分類上はヤドカリであり、歩脚がカニより1対少ないように見える。

 そのような便利な化合物キチンが生物進化のどの段階で現れたのかは定かではない。ただ、アノマロカリスや三葉虫などのような節足動物がカンブリア紀初期に登場しているので、少なくとも6億年前くらいまでにはキチンは登場したものと想像される。

 ただし、注意しなければならないのは、殻の化石といっても、炭酸カルシウムが成分である場合もあるということだ。化石としてはこちらのほうが残りやすく、棘皮動物や軟体動物の化石の多くはこの炭酸カルシウム由来である。いかにも節足動物といった外観の三葉虫も、殻の表面は実は炭酸カルシウムで、その保存性のよさによって彫刻のような膨大な量の化石が見つかっているのである。

 一方、キチンは有機化合物であるために意外と分解しやすく、化石として残りにくい。よって、キチン質主体の外骨格を持ったエビやカニの祖先がいつの時代に登場したかは、まだはっきりしたことはいえないようだ。今のところ、もっと古いエビの化石は古生代のデボン紀の後期(約3億6000万年前)、カニの化石は中生代ジュラ紀初期(約1億8000万年前)の地層で見つかっている。

 化石の順番からすると、エビからカニへと進化したということになる。それはエビとカニの形態や遺伝子の類似性から調べてもほぼ確実であるとされている。

 現生の種で形態的な違いを見てみると、クルマエビのようないわゆる「エビ」の腹部が徐々に小さくなるとヤドカリとなる。さらに腹部が小さくなると、タラバガニのような「カニらしいヤドカリ」となり、ヤドカリから別の系統として進化すると「ふんどし」とよばれる腹部を持つ、ズワイガニような「カニらしいカニ」となる。

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