トランプ大統領は選挙期間中にTPP(環太平洋パートナーシップ)からの離脱、パリ協定からの離脱、NAFTA(北米自由貿易協定)の改定、イラン核合意からの離脱などを強く主張していた。それらがすでに実現済みであることを忘れてはならない。
条文に「防衛義務」は規定されていない
トランプ大統領による日米安保条約の改定をも視野に置いたような言動に対して、日本の少なからぬ大手メディアが「アメリカには防衛義務があり、日本は見返りとして基地を提供している」といった解説を行っている。だが、このような報道こそが日本国民に誤った情報を植え付け、 さらにはそのような日本の国情に乗じてトランプ大統領による「防衛タダ乗り」のような論調が横行してしまうのだ。
そもそもアメリカが日本を守る「防衛義務」など、日米安保条約の条文には規定されていない。
アメリカ軍関係者の中でも日本に関与している高級将校や研究者などの間では、日米安保条約第5条が“NATO条約第5条と違って防衛義務を定めたものではない”ことは常識である。そのような単純明快な事実は、日米安保条約とNATO条約の条文を読めば明白である。
日米安保条約第5条には「各締約国は、日本国の施政下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和および安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定および手続きに従って、共通の危険に対処することを宣言する」との規定がされている。