(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)
「米国のドナルド・トランプ大統領は最近、側近との私的な会話の中で、日本との長年の防衛条約から離脱する可能性を口にした」――こんな報道が米国のブルームバーグ通信から6月24日、発信された。
日本のメディアでも「トランプ大統領が日米安保条約を破棄の意向」という趣旨の見出しで一斉に報じられた。事実だとすれば、日本にとって衝撃的なニュースである。
現実には、今の日米同盟はきわめて堅固に機能しているようにみえる。トランプ政権も大統領自身をはじめ、みな一致して日米同盟の堅持と強化を公言している。同大統領が5月に国賓として来日した際も、日米の第一線部隊を訪れて日米同盟の堅固さを強調した。そんなときに日米安保破棄とは、まさに青天の霹靂の報だともいえよう。
では、この報道の真相はなんなのか。
6月25日にBSフジのプライムニュースが特別番組を組んで分析を試みた。私もこの討論番組に出演して意見を述べたので、そのあたりを土台にして、このショッキングな報道の背景を眺めてみよう。
日本は真剣に受け止めるべき
結論を先に述べるならば、トランプ大統領が日米安保条約に強い不満を抱いていることは事実であるが、安保条約を破棄する意向があるのかというと、それは事実ではない、という総括となる。