6月17日、訪問先のモスクワで記者会見する韓国の康京和外交部長官(写真:Abaca/アフロ)

 康京和(カン・ギョンファ)韓国外交部長官(外相)が6月25日、いわゆる徴用工訴訟と関連して「日本から報復措置を取るなら、われわれも黙っているわけにはいかない」と発言、韓国側も対抗処置を準備していることを示唆した。韓国裁判所によって、三菱重工業など日本企業から差し押さえた財産の現金化が近く始まるとみられる状況で、日韓間で新たな貿易摩擦が生じる懸念が強まっている。

日本と「戦争」をするつもりなのか

 25日、韓国国会の外交統一委員会の全体会議に出席した康長官は野党の「自由韓国党」議員たちの質問に次のように答えた。

兪奇濬議員:最高裁判所の徴用被害者の賠償判決を受け、日本製鉄が保有する浦項製鉄株式の売却配当金が8月中に強制執行される可能性が高い。日本からは「報復も考えている」という発言が出ているが、これに対する対策を設けたのか。

康:そのような報復措置が取られるとすれば、状況はさらに悪化すると思われる。外交当局としては、そのような状況が生じないように綿密に準備し、協議している。ただ、(日本の)報復措置があった場合には、われわれも黙っているわけにはいかないと思う。

鄭鎮碩議員:それは、日本と戦争でもするということか? 貿易戦争やら外交戦争やら・・・、外交長官がそのように答えてもいいのか。

康:それだけ、お互いに状況悪化を防がなければならないという意味の話だ。日本の外交当局にもそう話している。

鄭:そうは聞こえない。ひたすらチキンゲーム、向かい合って走る汽車のような状況ばかりで、それ以外の検討がまったくできていないように聞こえる。この問題を扱う外交部の姿勢が大変心配だ。

 この日の康長官の発言は、韓国社会で大いに物議をかもした。保守系の「文化日報」は、「『黙っているわけにはいかない』という発言は、外交関係者のものとしては非常に厳しいレベルの(警告)発言だ。外交のトップがこのような言語を口にしたこと自体、極めて異例と言える。それだけ韓日関係が悪化していると受け止められている」と論評した。こうしたメディアの反応が気になったのか、外交部報道官も、定期ブリーフィングで「後続質疑や答弁もあった。全体的に(すべての発言を総合して)判断してほしい」と火消しに躍起になった。