G20の余熱が冷めやらないなか、6月30日突如、板門店での3回目の米朝首脳会談が実現した。韓国の文在寅大統領も交え、実質的には米朝韓3国首脳会談ともなった。
なぜこのような呼びかけをドナルド・トランプ大統領は行ったのか。なぜ金正恩委員長はそれに応じたのか?
G20での各国首脳会談の直後でもあり、関係国の戦略的な思惑が相互に確認された直後の、突然の動きである。
関係各国の思惑が錯綜するなかで、米朝韓の何らかの戦略的利害が一致したことが、背景にあるとみるべきであろう。
北朝鮮短距離ミサイル発射への対応に温度差
諸課題の実質的な進展のないなか、米韓両国大統領の融和姿勢が目立っている。
今年2月、ベトナム・ハノイでの米朝首脳会談が途中で打ち切られて以来、米朝関係は再び冷却化したかのように見られた。
2018年6月の初の米朝首脳会談以降、現在に至るまで、米朝交渉の本来の目的だったはずの、北朝鮮の「完全、不可逆で検証可能な核廃棄」について、何ら実質的な進展はみられない。
また、ハノイ会談で米側が指摘した、各種弾道ミサイルの廃棄についても、同様に進展はない。
今年5月4日と5月9日の2回にわたり、5月25日から28日のトランプ大統領の訪日と日米首脳会談の直前に、北朝鮮は短距離弾道ミサイルの発射訓練を行った。これは国連安保理の制裁決議違反である。
韓国軍合同参謀本部は、当初これを「弾道ミサイル」と発表したが即座に撤回し、5月4日に「短距離の飛翔体」と発表している。この経緯は、韓国の軍と政府の対北姿勢の食い違いを伺わせる。
日・米政府も4日の際はまだ、「飛翔体」と発表していた。日米韓各国政府とも、明らかな国連制裁決議違反となる「弾道ミサイル」との表現を回避し、制裁行動を強いられ事態が悪化するのを回避しようとしたものとみられる。
しかし9日に2回目の発射が行われ、同日、北朝鮮の『労働新聞』は、「金正恩委員長が長距離攻撃手段の訓練開始の命令を下し、成功裏に行われた」と報じた。