第2回の米朝首脳会談は、2日目に中断され、今後首脳会談が再開されるか否かは不透明な状況になっている。
まだ両首脳は、協議打ち切りを表明はしていない。しかし、第1回の米朝首脳会談後に高まっていた今後の朝鮮半島情勢についての楽観的な見通しは後退し、緊張が高まっている。
日本として採るべき一般的な対応策を検討した後に、今後の朝鮮半島情勢の見通しについて、5つのシナリオを分析し、日本として対応すべき基本方針を検討する。
米国の総合的ソフトパワー戦略の発動
第2回の米朝首脳会談で米側は、核兵器のみならず、生物・化学兵器とそれらの運搬手段である「あらゆる射程の」弾道ミサイルの全廃も要求した。
また、寧辺(ニョンビョン)以外の地域の非核化も要求したとされている。北朝鮮側の予期した以上に、2回目の首脳会談に臨む米側の姿勢は強硬であった。
金正恩国務委員長の面目は国内外で失われた。
しかし会談中断から約1週間は、ドナルド・トランプ大統領への直接的な非難や会談を「失敗」とする国内報道を抑制するなど、内外で宣伝してきた米朝首脳会談への期待が裏切られたことを取り繕うとの姿勢がみられた。
3月8日に北朝鮮のICBM(大陸間弾道ミサイル)製造工場での活動が報じられるなど、数日後になりようやく北朝鮮側の強硬姿勢への転換を示唆する兆候が出てきた。
このことは、金正恩(キムジョンウン)の会談中断への対応策に、揺らぎがあったことを示している。米側の心理戦の成果とも言えよう。
会談中断直後の3月1日には、金正男(キムジョンナム)の息子の金ハンソルを支持し、金正恩独裁体制の打倒を訴える「千里馬民防衛」と称する団体が「自由朝鮮」に改称し、ソウルで臨時政府を樹立したと報じられている。
さらに同団体は3月21日未明(日本時間)、金日成(キムイルソン)主席と金正日(キムジョンイル)総書記の肖像画が床にたたきつけられる動画をホームページ上で公開した。動画は北朝鮮国内で撮影された可能性がある。
この組織は米韓の情報機関との接点も取り沙汰されており、北朝鮮は神経をとがらせているとみられる(『読売新聞』2019年3月21日)。
今年2月22日には、北朝鮮の在スペイン大使館が暴漢に襲われるという事件も起きている。3月15日付米誌『ワシントン・ポスト』紙は、この事件の背後にも「千里馬民防衛」が関与していると報じている。
また3月11日に発生した駐マレーシア北朝鮮大使館の塀の落書きも自分たちが行ったものだと主張している。