米政府、ZTEへの輸出禁止措置を解除

中国・上海のビルに掲げられた中興通訊(ZTE)のロゴ(2018年5月3日撮影、資料写真)。(c)AFP PHOTO / Johannes EISELE 〔AFPBB News

 米中貿易戦争は長期化の様相を見せ始めている。米中両政府は2018年12月の首脳会談で貿易戦争の「休戦」で合意し、米中で交互に閣僚協議を続けてきた。

 ドナルド・トランプ大統領は2019年4月上旬の閣僚協議の際、米中が合意できるか「今後4週間で分かる」と発言した。

 もし閣僚間でまとまれば合意文書の詳細を詰めたうえで、5月中にも首脳会談を開いて署名する可能性があると報じられている(『日経新聞電子版』2019年4月24日)。

 しかし、米国が課した追加関税の扱いなどをめぐり対立点は残っており、米中首脳会談までに溝が埋められるかは微妙な状況にある。

 米中貿易戦争の根底には、米中間の覇権争い、特に軍事、民生両面の今後の発展を左右する、最先端通信電子分野をめぐる対立がある。

ZTE制裁に対する中国側の深刻な危機感

 2018年8月に陳芳、菫瑞豊編著『中国チップ産業の分析―中国チップ産業の競争と攻囲突破―(陈芳,董瑞丰编著『”芯”想事成: 中国芯片产业的博奕与突围(Deciphering China’s Chips Industry)』北京、人民邮电出版社,2018年8月)という本が出版されている。

 この本が出された背景には、米国が突然仕かけた対中経済・技術戦争に対する中国側の深刻な危機感がある。

 同書の「前言」では、2018年4月16日に米国商務省が、中興通訊(Zhongxing tongxun: ZTE株式会社(股份))に対して、突然制裁命令を宣告したことを冒頭に挙げ、これほど、中国の「チップ(芯)」産業が生死をかけた速度を競う場となり、緊迫した時はないと危機感を表明している。

 また、米国の狙いは、世界第4位の通信設備製造企業を狙い撃ちして、一撃で打倒しようとすることにあると、非難している。

 さらに、ZTEの事件は孤立したものではなく、このような事件は今後も起こるとし、その背景には、中国のチップ(芯)が戦略的な競争の場において唯一最大の重圧がかかっている点だからだと指摘している。

 そのような観点から、「我々は、幅広くグローバルな視野と歴史の大きなトレンドに立脚して、観察しなければならない」と、本書の目的を明確にしている。

 特に、チップ技術は現代の工業化と情報化の社会における基礎をなすものであり、この「首根っこ」となる技術を押さえられるわけにはいかず、自主開発が不可欠であると強調している。

 また、以下のような警告も発せられている。

 「日進月歩の技術進歩がなされ、膨大な工業システムに直面している現在では、一人の『技術英雄』が出ても優位に立つことはできない。過去数十年間で企業の生産条件も組織も深刻な破壊を受けてきた」

 「産業の発展は科学の法則に背き、そのうえ国際的な技術の封鎖と移転禁止もある。我が国のチップ産業の基盤は分散的であり、手工業的な生産態勢であり、国際的なレベルとの格差を縮めるのは容易ではなく、その格差は正に拡大する趨勢にある」

 「技術進歩はたちまち覆り、ひとたび後れをとると、たちまち大きく引き離されることになる」

 このように中国の現状認識はきびしく、まだまだ基盤は脆弱で、生産態勢も遅れており、ここで後れをとると、また大きく引き離されるのではないかとの危機感が高まっていると言えよう。