眼も心臓も、イカの体は驚くほどハイスペックだった

生物進化を食べる(第3話)軟体動物篇

2019.06.28(Fri)大平 万里

 他にも、イカは体表の色素胞を変化させて、まるで光学迷彩のように、体色や模様を瞬時に周囲と同化させることのできる種も多い。天敵から身を隠したり、獲物を狙ったりするときに大いに役立っていることだろう。

 そして、イカは天敵に対峙しても、ご存知のように墨を吐いて姿をくらますこともできる。その際には体内で水流を生み出して漏斗(「口」のように見えているところ)から噴出させるジェット推進の原理で高速移動する。しかも、その漏斗の向きによってどのような方向転換も可能だ。その高速運動を維持するためのえら呼吸も、本体の心臓のほかに、副次的な2つの心臓によって効率的に維持されている。

 さらにいうなら、イカの脳は、その体重比で見ると鳥類や哺乳類に次ぐ大きさがあり、高い学習能力があるとされる。

 これだけ書き並べるとイカのハイスペックぶりを痛感するほかない。だが、裏を返せば「殻による防御はしない」という選択を数億年前にしたことによる結果ともいえるかもしれない。

ヒトにとっては食べやすい生物

 しかし、不運にもヒトに捕獲されてしまったイカは、表面に殻がない故に非常に調理がしやすい食材となる。内臓やえらなどのわたと殻の名残を抜き取り、薄皮を剥けば、あとはすべて高タンパクな可食部である。

 なぜ高タンパクかといえば、高度な運動能力を獲得する中で筋肉を発達させたからである。重量あたりの可食部の比率はかなりよいほうではないだろうか。実に食べ応えがあり、しかもさまざまな料理に使うことができる。数億年の進化の成果もヒトの食欲の前では無力なのだ。

 しかし、ヒトは「殻を剥いてでも食べたいものは食べたい」とも願う貪欲な生き物である。次回はそんな「殻付き」の生物の進化を見ていこう。

第4話へつづく)

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