「イーストフード、乳化剤不使用」を強調表示するパンも見られるが、それは消費者への適切な情報提供といえるだろうか。(写真はイメージ)

 2019年3月26日、山崎製パンは「『イーストフード、乳化剤不使用』等の強調表示に関する当社の見解」を発表し、不使用表示を行っている食パンメーカーに対し、このような強調表示を即刻やめるように呼びかけた。

 本見解は、山崎製パンと他社のパンの分析結果だけでなく、表示の消費者に対する影響力の大きさ、表示がビジネスの手法のひとつになっていること、その背景にある消費者の認識など、多くの重要な課題を投げかけている。

強調表示は、安全に関わらない任意の表示

 食品の表示には保存方法やアレルギーなどの安全に関わる情報と、原料原産地、栄養成分、遺伝子組換えかどうかなどの消費者の商品選択に資する情報を提供する表示がある。また、表示には「義務表示」と「任意表示」があり、食品表示法に従って表示されている。

 極端な言い方をすれば、消費者の健康被害に直結するのは、アレルギー、それに食中毒に関わる表示だけともいえる。

 これに対して強調表示は、不足しがちな栄養成分について、たとえば「高タンパク質」のように示して摂取を促したり、摂りすぎない方がいい栄養成分について、たとえば「塩分控えめ」のように含有量の低減を示したりすることを目的に実施される。強調表示は安全に関わるものではなく、任意に行われている。

イーストフード・乳化剤とも国に安全性が認められた食品添加物

「イーストフード、乳化剤不使用」という強調表示における「イーストフード」と「乳化剤」は、それぞれどんな機能を担っているのか。

 まず、乳化剤は、水と油をうまく混ぜ合わせる働きをするものであり、安全で有効な食品添加物として厚生労働大臣に認められている。たとえば、マヨネーズの材料の酢とサラダ油は、正に“水と油”で混ざりあわないもの同士だが、卵が乳化剤として働き、なめらかなマヨネーズとなる。このとき、私たちは「乳化」を実感する。このように乳化剤は「余計なもの」ではない。パン製造においては、その保水性を高め、長い間、パンを柔らかく保つ役割を乳化剤は担っている。