年間4万社もの中小企業が廃業している日本。かつてのような経済成長が望めない成熟社会であるいま、大きな注目を集める投資手法のキーワードに「事業承継」がある。人生100年時代の新たな投資術とキャリアの切り開き方とはどのようなものか。前回(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56368)は、この分野の第一人者である奥村聡氏が「事業承継」のメリットを紹介した。続編となる今回は、中小企業を「個人購入」する際の具体的なノウハウを解説する。(JBpress)
(※)本稿は『0円で会社を買って、死ぬまで年収1000万円』(奥村聡、光文社)の一部を抜粋・再編集したものです。
小さく買って、大きく育てる
あなたが「事業承継」を考えているなら、会社やオーナー社長について知らなければいけません。企業の実態や傾向、それを経営している社長とはどんな人間でしょうか?
まずは、ターゲットとする会社について考えてみます。実際のところ「中小企業」と一言でまとめるには無理があるぐらい、会社ごとに差があります。たとえば従業員は数10人。1桁でもなんの違和感もありません。きれいな工場やオフィスを持っていないケースも多いでしょう。
かつて、中小企業の世界でM&Aはあまり行われていませんでした。ですが、事業承継問題の顕在化とともに、今では小さな会社の取引も行われるようになっています。しかし、小さな会社とはいっても、売り上げ規模で年商3億円を下回るものはなかなか成約に結び付きません(あくまで私の感覚です)。
買い手は、効率を求めてM&Aを行うのであり、ある程度の規模が最初から欲しいのが本音です。規模がないと、既存事業との相乗効果も見込みにくくなります。
個人であるあなたが会社を手に入れようとするならば、これまでのM&Aでは取り引きされてこなかった層の会社を狙うのが妥当な戦略になります。中小企業の中でも、小さめの会社がターゲットとして有力です。
「こんな小さな会社では物足りない」と感じ、プライドが満たされない方がいらっしゃるかもしれません。たしかに、初めからそれなりの会社を買える可能性はゼロではありません。他者を巻き込み、大きな資金を集めることができれば。
しかし、最初から大きい会社を経営すればリスクが大きくなります。小さなところから始めて、経営センスを養うのも悪くないのではないでしょうか。背伸びして大きなものを買うよりも、小さな会社を手に入れて、大きく育てるという発想もあるはずです。