企業買収や合併が海外ほど一般的ではない日本で、これだけ活発に買収・合併が行われている業界も珍しい。そしてこの話と日暮里がファミマ王国であることはドミナント出店の、そしてコンビニビジネスのキモだ。

ドミナント出店は「弾幕」である

 コンビニのビジネスモデルは「規模の利益」の追求で、売り上げが多いほど儲かるという極めて単純な原則だ。他業種の分かりやすい事例として、自動車業界が合併や提携で規模の利益を追求している。売り上げ規模が大きいほど仕入れや生産、宣伝広告、研究開発が効率的に行える。

 コンビニも一部地域に集中的に出店するほど配送の効率が上がり、知名度も上がり、それによって利益が増えると言われている。

 しかしこういったウィキペディアに書いてあるような説明でドミナント出店を正当化できるほど利益は増えるのか? この説明は必ずしも間違ってはいないと思うが、今回の騒動をきっかけに「近所に同じチェーンを出店されて売り上げが何十万円も減った」「ライバルチェーンが撤退したと思ったら跡地に自分が経営するのと同じチェーンが出店した」といった恨み節がオーナーから多数噴出している。そして各コンビニ本部は当然のことながら既存店の売り上げ減少を承知の上で、あえてすぐ近くに出店している。

セブンイレブンの店舗数推移
拡大画像表示

 ドミナント出店の目的は、自社の売り上げを増やすことに加えて、「他社の売り上げを減らすこと」、要するにライバルの邪魔だ。そして最終的には「ライバル店が潰れて撤退してくれれば最高」ということになる。このようにあえて過剰な出店によって「弾幕(だんまく)」を張っているのだ。

「無駄に意味がある」というコンビニのビジネスモデル

 弾幕とは「多数の弾丸を一斉に発射し、弾丸の幕を張ったようにすること(デジタル大辞泉)」で、タマをたくさん撃って敵を倒し、近づけさせないことが目的だ。

 弾幕は「張る」ことに意味があるので、タマが無駄になっても良い。いや、むしろ無駄にたくさん撃つことに意味がある、という発想だ。「無駄に意味がある」というのはコンビニのビジネスモデルの根幹と言って良いだろう。

 ドミナント出店で弾幕を張るように過剰な出店を行う理由は、結果としてライバルの進出を防ぐことにある。

「深夜に客が来ないなら閉めても良いじゃないか」という話も夜間だけ店を閉めればその時間帯だけ弾幕が薄くなる。結果的に客が他のコンビニに行ってしまうスキになりかねない。したがって、無駄でも良いから店を開けておけ、ということになる。深夜は清掃や商品補充でメンテナンスの時間帯であるという話も、結果的に客が少なくてヒマだからメンテナンスの時間にあてているだけだ。

 本部側の意向で大量に発注させて品揃えを充実させることも、客が来るなら結果的に廃棄になっても良いという発想だ。これも「無駄に意味がある」という弾幕の一部だ。ただ、その結果本部の取り分が減るのはよろしくない、じゃあ廃棄の量が自社の利益に影響しない形でロイヤリティーを計算しよう・・・これが「コンビニ会計」の正体だ。