そしてフランチャイズ制は、小売業という手間がかかる一方で儲かりにくいビジネスのリスクを本体から切り離し、24時間営業を維持するため実質的に「労働時間に制限の無い従業員」としてオーナーを利用することが目的だ。すでに超大企業になったコンビニ各社にとって、小資本でスピーディーに出店が可能といった教科書的なフランチャイズ制のメリットはゼロに等しい。
コンビニ会計もドミナント出店も「結果」である
ここまで何度も「結果的に」を繰り返し使用してきたが、それはコンビニのビジネスモデルの特徴は、総論であるビジネスモデルから導かれているからだ。この仕組みを極限まで最適化しているのが業界最大手のセブンイレブンだ。
「無駄になっても良いから24時間営業と物量作戦で自社の売り上げを増やして、他社の出店と売り上げを妨害し、利益を最大化する。かつ、事業リスクを外部に移転するため、フランチャイズ制を採用する」
これが綺麗ごとを全て取り払った、身も蓋も無いコンビニエンスストアのビジネスモデルの説明となる。
ムチャクチャな説明に聞こえるかもしれないが、「経営戦略」と言われるように、ビジネスはライバルとの熾烈な戦争であり、最高の状態は敵のいない独占だ。敵を叩き潰すことを目的としたコンビニのビジネスモデルは利益追求だけを目標とするなら正しい。
客の少ない深夜に店を開け、既存店のすぐ近くに出店して、大量の廃棄をあえて出す・・・。
個々の特徴を見ればおかしなことばかりだが、「弾幕」の観点で見れば合理的だ。そしてフランチャイズオーナーの役割は「戦場の最前線に立つ末端の兵士」で、しかも正社員ではないので傭兵となる。表に出てこないだけで大儲けしているオーナーも多数いると思うが、大損して撤退したオーナーも多数いる。
セブンイレブンが頑なに24時間営業、ドミナント出店を辞めない理由は根底にあるビジネスモデルを維持するためで、現在批判されている仕組みは全て「原因ではなく結果」だ。原因(ビジネスモデル)が変わらなければ、結果も変わらない。したがって、どんなに結果の部分だけを批判してもビジネスモデルが変わらない限り結果の部分も変わらない。
いま各コンビニ各社に問われているのは、「24時間営をやめるかどうか」ではなく、「ここまで嫌われてしまったコンビニのビジネスモデルをどう立て直せばいいか?」なのである。そこについては、次回でまた触れよう。
『なぜセブンイレブンの近くにセブンが出来るのか』
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56205
に続く。
※筆者はコンビニ各社について、過去のアルバイト勤務と消費者としての利用を除いて、各種取引、株の保有(過去も含めて)、把握する範囲で親族の勤務等の利害関係が無いことは明記しておく。