なお、ヒズボラの南米人脈は現在も健在で、例えば混迷の最中にあるベネズエラのマドゥロ左翼政権内にも強いコネクションを持つとともに、現在も麻薬取引やマネーロンダリングなどの取引がある。
外国のテロ組織を育成し、革命を「輸出」
また、クドス部隊は、外国のテロ組織を育成する工作も行った。スーダン、パレスチナ、レバノン、イラク、ヨルダン、トルコ、アフガニスタン、タジキスタン、エジプト、アルジェリア、リビア、チュニジアなどの反政府ゲリラを訓練し、テロリストに育て上げる工作である。クドス部隊の軍事顧問がこれらの国々に派遣されて指導することもあったが、イラン国内の訓練所で指導することもあった。
また、90年代のボスニア内戦にイスラム義勇兵を送り込む工作も活発に行った。90年代~2000年代の世界的なイスラム・テロリストの後援者といえばアルカイダが有名だが、実際のところ、規模ではおそらくイラン革命防衛隊クドス部隊のほうが大きい。
もっとも、2003年のイラク戦争以降は、各地のテロ組織の背後で暗躍するというより、むしろ各地のシーア派勢力を軍事的に支えて、イランの影響力を拡大するという工作に主眼を移している。しかも、革命防衛隊の工作による犠牲者の数ということでみれば、こちらのほうが、より被害が大きい。こうした工作もクドス部隊の仕事だ。
イラクは実質的にイランの支配下に
今この瞬間にも、クドス部隊は世界各地で紛争を扇動し、罪なき多くの人々を苦しめている。現在、クドス部隊が暗躍して流血が拡大しているのは、主にイラク、シリア、イエメンだ。米国務省の推計では、イランはクドス部隊を通じてこれらの地域の親イラン勢力の支援に、現在も年間10億ドル(約1113億円)を支出しているという。
このうち、イエメンでは対立する一派であるシーア派系の「フーシ派」勢力を支援しているが、こちらはイランからのアクセスが制限されていることもあり、支援の規模は制限的だ。他方、イラクとシリアでは、クドス部隊はもはや「黒幕」と言っていい存在感を獲得している。