「米国こそ世界のテロ指導国」イラン大統領、厳しく非難

イラン・テヘランで演説するハッサン・ロウハニ大統領。「米国こそ、世界のテロリズム指導国だ」と反発している。大統領府提供(2019年4月9日撮影・公開)。(c)AFP PHOTO / HO / IRANIAN PRESIDENCY〔AFPBB News

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(黒井 文太郎:軍事ジャーナリスト)

 トランプ政権が初めて国家の軍事組織を「外国テロ組織」として指定した。イランの「イスラム革命防衛隊:IRGC」(革命防衛隊)である。前回は革命防衛隊が中東で今やISに代わる危険な存在となっている状況を説明した。今回は、テロ活動を行い、紛争を扇動する、革命防衛隊の国外での暗躍の様子を明らかにする。

(前回)「米国がテロ組織指定した『世界最凶』国家軍事組織」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56103

イランによるテロのターゲット

 イランがこれまで行ってきたテロは、大きく分けると2種類ある。1つは、反体制派のイラン人の殺害で、もう1つは対米あるいは対イスラエル/ユダヤ人に対するテロである。

【1】反体制派のイラン人の殺害

 反体制派イラン人の暗殺は、欧州亡命組を中心に、1980年代から90年代にかけてかなり頻繁に行われ、少なくとも20か国以上で、計350人以上が殺害された。ただし暗殺作戦は、2000年代以降は比較的沈静化している。亡命反体制派の活動家たちが高齢化し、武力で体制を倒せるような存在ではなくなったからである。

 ちなみに、当時の暗殺作戦は、革命防衛隊の特殊部隊である「クドス部隊」とイラン情報省情報機関「SAVAMA」の2系統があったが、現在では、汚れ仕事の対外的破壊活動はクドス部隊がメインになっているようだ。

【2】対米あるいは対イスラエル/ユダヤ人のテロ

 他方、対米あるいは対イスラエル/ユダヤ人に対するテロは、クドス部隊をはじめとするイラン組織が自ら行うより、手下であるレバノンのシーア派組織「ヒズボラ」に指令してテロを行わせるといったことが多かった。

 ヒズボラは革命防衛隊が指導して82年に創設されたレバノンのシーア派ゲリラで、83年にレバノン駐留の米仏軍に自爆テロを行ったり、80年代に欧米人30人以上を誘拐したりするなど、当初からテロを常套手段とするグループだった。現在に至るまで、完全にイラン最高指導者=革命防衛隊ラインの傘下にある。

 その活動範囲は、遠く南米まで広がっていた。実は南米にはレバノン系移民が多く、そのネットワークには地下社会で麻薬組織化した人脈もあった。ヒズボラはそうした人脈にもコネクションがあり、90年代にはアルゼンチンでイスラエル大使館やユダヤ人施設を狙った大規模テロを何度か実行している。いずれもイランの指令によるものだ。