なぜ日本人だけがゴボウを育て文化に発展させたのか

世界で唯一の発展を遂げた根菜の物語(前篇)

2019.04.12(Fri)漆原 次郎

外国人は「ゴボウ食で虐待された」と訴える

 太平洋戦争中、ゴボウを巡ってこんな国際事件があった。日本軍は敵国捕虜たちにゴボウ料理を与えていた。だが、捕虜たちにはゴボウ食の文化も経験もあるはずがない。戦後の軍事裁判では、当時のオーストラリア人捕虜から「私は木の根を食べさせられた」という虐待を受けたとの訴えがあった。ゴボウを与えていた旧日本軍人は戦犯扱いになったともいう(その罪だけではないだろうが)。ゴボウを食べる文化と食べない文化の違いから生じた出来事だ。

 世界を見渡しても、ゴボウを食べる文化があるのは日本と韓国ぐらい。その韓国も、日本ほどさまざまなゴボウ料理があるわけではない。日本におけるゴボウの栽培や食は、世界で唯一のものといってよい。

 ではなぜ、ゴボウの栽培や食が日本だけでこれほど発展したのか。前出の冨岡典子氏は、ゴボウとよく似た日本原産のアザミ属を食べる習慣が一要因だという考えを示している*1。キク科アザミ属の「モリアザミ」は「山ゴボウ」とも呼ばれ、古くから根も食べられてきた。日本原産の山ゴボウに対するこうした食習慣が前段にあり、日本人だけが当然のようにゴボウも「食べられるもの」と認識し、日本固有のゴボウ食文化にまで発展したとすれば、興味深いことだ。

 他の国のことはつゆ知らず、日本人はゴボウの格を上げに上げてきたのだ。そして今もなお、ゴボウの栽培や食を発展させる日本人の営みは続いている。後篇では、ゴボウの新品種の開発の取り組みを追ってみたい。

後篇へつづく)

*1:冨岡典子「日本におけるごぼうを食材とした料理の地域的分布と食文化」 日本家政学会誌 52, 511-521 (2001)

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