眠気を覚ましたいときや、仕事で気合いを入れたいとき、コーヒーを飲む。コーヒーに含まれる「カフェイン」の作用を期待してのことだ。たしかに、コーヒーを飲んだあとは、気分が高まるような気がしないでもない。
全日本コーヒー協会が行った「コーヒーの需要動向に関する基本調査」によると、日本における1週間のコーヒー飲用杯数は、2016年で平均11.09杯という。カフェインは、コーヒーのほか、緑茶や紅茶などの各種お茶、またエナジードリンクなどにも含まれている。量の多少はあれ、私たちは日常的にカフェインを摂取しているのだ。
今回は、かくも身近な「カフェイン」について学び直したい。体への作用とはどういったものだろうか。「眠気覚まし」や「興奮」の効果はよく言われているが、他に言われる「リラックス」や「酔い覚まし」などの効果はあるのだろうか。
カフェインをめぐる数々の疑問を、専門家に投げかけてみた。応じてくれたのは、元東京福祉大学教授の栗原久氏。幅広くカフェインの作用について研究し、『カフェインの科学』という著書も出している。
前篇では栗原氏に、カフェインとはどんな物質で、どんな作用があるかを聞いてみた。乱用薬物などとは一線を画す「効き目のほどよさ」が特徴のひとつといえそうだ。後篇ではより具体的に、カフェインとの賢いつきあい方についてアドバイスを受けることにする。
人類、コーヒーの興奮作用に気づく
――カフェインとは、どのような物質でしょうか。
栗原久氏(以下、敬称略) カフェインは「アルカロイド」とよばれる、窒素の原子(N)を含み、苦みを呈する物質の一種です。コーヒーの果実、また茶葉などに含まれていて、抽出した粉末は、舐められないほどの苦味を持ちます。
――コーヒーノキなどの植物は、そもそもなぜカフェインを持っているのでしょうか。
栗原 苦みを持っていれば動物、特に昆虫に食べられにくくなります。カフェインなどの苦み成分を持つ植物が生き残り、いまに至ったわけです。
――動物が普通は避けるカフェインを、人類は積極的に摂取しているわけですか。