発展途上国の生産物に対して正当な対価を支払い、生産者の生活を持続的にサポートする「フェアトレード」。しかし、慈善事業の考えから高値で買い取ろうとするだけでは、取り組みを持続していくのは難しい。
そのアンチテーゼとして、生産物の品質そのものを向上させることで、消費者側が自発的に高い価格を支払うようにする「真のフェアトレード」に挑戦する企業がある。インドネシアで生産されるカカオに注目して、カカオの輸入からチョコレートの販売を行う「Dari K(ダリケー)」(京都市)だ。
インドネシアは、世界第3位のカカオ生産量を誇る。だが、インドネシアのカカオはこれまで日本へはほとんど輸入されてこなかった。生み出されるカカオ豆の品質の低さが日本への輸出を妨げていたのだ。Dari Kは2011年の創業以来、インドネシアのスラウェシ島で、カカオ農家の意識の改革と品質の向上に取り組み、日本への輸出拡大を成功させてきた。
Dari Kはどのようにして現地の人々の心を動かしたのか。そして「真のフェアトレード」の実現には、何が必要なのか。Dari K代表の吉野慶一(よしの・けいいち)氏に話を聞いた。
方法論より「出口」を見せることが大事
――吉野さんは証券会社などでのキャリアをお持ちですが、なぜインドネシアのカカオの事業を始めたのでしょうか。
吉野慶一氏(以下敬称略) 出会いは1枚の地図です。たまたま入ったカフェに、世界のカカオ産地の地図が貼ってあったんです。カカオは、赤道付近の熱帯、アフリカや中南米に加えて、日本のすぐ近くのインドネシアでも採れるんですね。でも、実際に日本がどこから輸入しているかというと、8割はガーナで、インドネシアは0.3%くらいです。
それで興味を持って調べていき、その理由を探りに現地に行ってみると、現地のカカオ農家の中には、自分たちが栽培しているカカオがチョコになると知らない人もいて、やる気がないのです。彼らにとってカカオは、収入を得るための換金作物に過ぎないのです。自分たちのチョコレートをおいしく食べている世界とあまりにも違う世界がそこにはあって、カカオ農家の人たちはこのままでいいんだろうかと疑問に思ったんです。