ごはんに呼ぶ件も、「遊びかごはんか」という思考の枠組みだと、当然遊びを選ばれてしまう。少し回り道のようでも、指の数を当てるクイズという別の枠組みに変えてしまうと、「今の遊びか、別の面白そうな遊びか」という、遊びの選択に変わってしまう。そうすると今まで熱中していた遊びのことから意識が離れる。その後、競争という別の枠組みを示されて、さらに遊びから意識が遠のく。

 子どもが言うことを聞かない場合は、思考の枠組みをひとつふたつ挟んで、誘導するとよい。「遊びか否か」という緊張状態にいきなり持ち込むのではなく、「あっちの遊びかこっちの遊びか」というのを挟むと、スムーズに誘導できることが多い。

 大人でも、深刻な案件はいきなり切り出さず、他愛もない話で和ませてから話すことが多い。いきなり緊張を強いられるような、シビアな話題に入るより、「あなたのことは高く評価していますよ」という話題をしておいてから、注意をしたほうが、「この人は私のためを思って注意してくれたんだな」と受け入れやすい。

「思考の枠組み」を「挟む」というのは、ビジネスシーンでも重要なノウハウだ。商談においても同じことが言えるだろう。

「思考の枠組み」が歴史を動かした

 薩長同盟の名シーンでも、同じことが言える。司馬遼太郎の『竜馬がゆく』に次のようなエピソードがある。

 薩摩藩、長州藩はそれまでのいきさつから、反発し合っていた。坂本竜馬の勧めどおりに同盟を結べばよいのは分かっているけれど、自分の方からは頭を下げたくない。プライドが邪魔して、どうしても同盟の話を互いに切り出すことができなかった。

 そんな緊張した状態で、なんとか薩摩、長州の双方を、対面させることができた。しかし、相変わらず、互いに話を切り出そうとしない。そんな張り詰めた空気の中、長州藩の側から「芋侍が」という悪口が聞こえた。

 そうでなくても決裂寸前の緊迫した空気で、そんな悪口が聞こえたものだから、すわ、決裂、いやそれどころか、斬り合いだって起きても不思議ではないこの場面。

 そんな中でなんと、竜馬は大笑い。「芋侍! うまい!」と言ってゲラゲラ笑った。