大企業では半会社勢力が一人くらいいても大勢に埋もれて目立ちませんが、従業員20人未満の中小企業の場合、1人でもそんな人がいると、対応に苦慮することになります。その人に同調するような人が出てくることもあり、組織が蝕まれてきます。仕事が出来て、発言力が多い人であれば、なおさら負の影響力を発揮します。

 もうこうなると組織にとってはがん細胞。ほかの人たちに転移する前にさっさと辞めてもらった方がいいのです。そうしないと、社内のチームワークが壊滅的なダメージを受けることになってしまいます。

 その観点から、中小企業の経営者から反“会社”勢力で困っているという相談を受けた際は、あえて強く「その社員は辞めさせた方がいいですよ」と進言することもあります。

問題社員のおかげでまじめな社員が次々と離職

 先日、私が支援しているある企業の社長から、「うちの会社、社員がけっこう辞めるんです」と相談を受けました。「辞める理由は何ですか?」と社長に聞くと、「夏場の作業が体力的にきついから、ということです」とのことでした。

 でも、腑に落ちなかった私は社長に根掘り葉掘り質問していきました。すると、どうやらあるベテラン社員と一緒に作業している社員がほぼ辞めているということが分かりました。仮にその人物をAとすると、社内では「Aと一緒に仕事をするのが嫌だ」と言う社員が多く、Aが原因で辞めていった人が何人もいたことが分かりました。

 以前も書きましたが、社員の離職は大きなロスです。採用コスト、教育コスト、人件費・・・Aのせいで、これまで同社は大きな損害を被ってきたわけです。

 そこで社長に言いました。「社員が辞めるのは、仕事がきついんじゃなくて、こいつのせいですよ」と。「これから決めなきゃいけないのは、Aをどうするかですよ。注意しても直らないのであれば私は辞めさせたほうがいいと思う」。そこまではっきり伝えました。

 社長も納得してくれたようで、「じゃあ、その線でAと話してみます」ということでした。

 結局、Aは自分の非を認め、改心を誓ったので、そのまま雇い続けることになりました。これはこれでよい結果だったと思います。

 中小企業で離職率が高くなる要因の一つが、このAのような人間の存在にある可能性もあります。だいたい社員が次々に辞めていくというのは、社内の人間関係に原因があることが多いです。その原因を放置したままで、いくら「働き方改革」を叫んでも、働く環境は変わりません。

 しかし、だからと言って「問題社員」に対して「君、クビだ」と言うことは、法律的にも不可能です。

 では、「問題社員」どうすればいいのか。これはもう端的に本人に言えばよいのです。もちろんパワハラになるような伝え方はNGですが、例えば「君のマネジメントのせいでこういう悪影響が出ているんだ。直してくれないと困るんだ。改善してもらえないのなら、君は別の道を考えたほうがいいよ」という具合に正直に言うのです。

 社長は組織の全体最適の視点を持つ必要があります。何か障害があるのであれば、速やかに対処しなければ問題は大きくなり、組織が蝕まれていくのです。

 肉体的な疲労よりも精神的な疲労の方が疲労度は高く、いわゆる気疲れによって生産性は低下します。ある会社の管理職の方は、「問題社員が1人いるだけで部署全体のパフォーマンスが30%は下がっている」と仰っていました。これは会社としても大問題なはずです。

 一般的に解雇は悪というイメージがありますが、組織に悪影響を及ぼし、改善の見込みがない問題社員とは一緒の道を進むことはできません。真面目に働いている社員が嫌な思いをしたり、我慢したりしているのを放置している方が悪です。経営者としてどちらを優先するかは明白です。