企業も真剣に学生のアイデアに期待

 P&Gジャパンの狙いは学生の意欲に火をつけることだけではない。松浦氏はイベントを通じて、学生のアイデアに期待していたと明かす。

 「教育プログラムとはいっても、私たちもまた、学生さんの柔軟なアイデアによって何か新しいチャレンジを生み出したいという狙いはありました」

 「実際に今回、学生さんたちから寄せられたアイデアは私たちの予想を超える高レベルなものでした。特に優勝チームのアイデアは、マーケティングのキャリアをもつ私たちにとって目が覚めるようなものでした」

 「学生チームとともに、弊社も真剣に『仕送り市場』を作りたいと思っています」

 イベントをやってみて、学生のレベルの高さに驚いたというのだ。実は日本の大学生には相当の潜在能力があるのに、それを社会が生かし切れていないという側面もうかがえる。

 今回、P&Gジャパンのイベントに優勝したチームのプランが具体的に動き出すということは、見方を変えれば学生のアイデアが世界的企業を動かしたということでもある。これは大企業と学生の連携によるオープンイノベーションと言ってもよさそうだ。

 谷出氏は、大学、企業、学生と三者ともに、それぞれが自分で変わる努力をする必要があるという。

 「日本の産業がもう一度、成長を遂げていくためには大学がこうだからとか、企業がああだからとか、就活ルールがどうだとか、誰かのせいにしたり依存したりしている場合ではないと思うんです。それぞれが覚悟を持って変わっていく努力をすることで、日本の産業を発展させていくしかありません」

 企業もまた貪欲に学生たちからアイデアを求めている。再び日本の企業が世界的に存在感を示すには、企業も大学も、そして学生もそれぞれが変わらなければならない時に差し掛かっている。

 そういう意味では、今回のP&Gジャパンのビジネスコンテストは企業と学生が雇用者と被雇用者の関係から、協力する関係に変わる新しい試みなのかもしれない。もちろん大学と企業は今後もさらに歩み寄る必要がある。

 第2回で東京大学・高大接続開発研究開発センターの濱中淳子教授が語っていたように、企業はリカレント教育を含めた大学の教育機能を、もっと活用してはどうだろうか。

 それによって人材が大学と企業を常に行き来する間柄になれば、三者は縦の関係ではなく、肩を並べて刺激し合う理想の関係を築くことができるはずだと、今回の取材を通じて感じた。