テキサス州とメキシコ国境にはほとんどのところで壁が建設されていない。山岳地帯とリオグランデ川が境界線にあるからだ。

 そのため不法入国者の約4割が同地域を狙って越境してくる。

 トランプが今後、建設しようとしているのは約530キロだ。日本で言えば東京・大阪間の距離に匹敵する。予算は57億ドル(約6200億円)。

 それでも国境全体の約半分の距離である。1人も入れずという警備はほとんど無理だが、ないよりはあった方がいいとの考え方が現場の人間の集約された意見だ。

 壁建設のアイデアは1990年代のビル・クリントン政権にまでさかのぼる。以来、複数の法案が可決されて壁の距離が少しずつ伸びてきた。

 そのおかげで、不法移民数は減り続けている。ピークだった2000年には約160万だったが、昨年は39万にまで減少した。

 これはひとえに壁の効用と考えて構わない。

 ペロシは非人道的と言うが、パスポートもビザもない人間に国境を解放するわけにはいかないことは万国共通の倫理であろう。