そのため、特に競争力の高い企業の投資額は以前に比べてはるかに巨額になり、そうした一部の企業の投資規模増大が国別の投資額を押し上げるケースが増えている。
こうした事情を背景に、国全体としては対中投資に慎重な企業が大部分を占めていても、一部の積極的な企業だけで投資額を押し上げる状況も見られている。
以上のような要因から、欧米企業の投資額が2018年に増加していると考えられる。
4.先行きの日本企業の対中投資
先行きを展望すれば、本年6月には大阪で開催されるG20サミットに合わせて、習近平主席の訪日が実現する可能性が高い。
それに合わせて、日中双方が民間経済交流を一段と強力に促進するための様々な協力案件や規制緩和政策を準備すると考えられる。
加えて、中国の中央地方政府は、投資姿勢が慎重化している欧米企業より、積極化しつつある日本企業を重視して誘致活動に注力している。
それにより、従来では日本企業が参入できなかった事業分野への参入が可能となるほか、規制緩和や許認可の面でも従来では得られなかった優遇措置を享受できる可能性が高まっている。
加えて、米中摩擦の副産物として、知的財産権の保護強化や技術移転強要の緩和といった、日本企業にとっても好ましい投資環境の整備が進むことが期待される。
こうした日中関係の改善や米中摩擦といった政治的要因を背景とする投資環境の改善に加え、前述のような日本企業自身の投資姿勢の積極化が相まって、今年はこれまで以上に対中投資が積極化する可能性が高いと考えられる。
多くの日本企業は2012年以降、数年間にわたって中国国内市場の大きなビジネスチャンスを見落としてきたため、当面は次々と新たなチャンスに気づかされるケースが続くことが予想される。