問題のレベルがまったく違う、受精卵へのゲノム編集
ところが今回は、“受精卵”にゲノム編集を行ったという。これは、患者の一部の細胞でゲノム編集を行うこととは意味合いがまったく異なる。ここまで述べた例とは、完全に切り離して考える必要がある。
受精卵からは、胎盤を含め、人体を構成するすべての細胞が作られる。受精卵の遺伝子を変えるということは、体のすべての細胞に含まれる遺伝子を変えるということだ。当然、そこには精子や卵子も含まれるため、その変化は次の世代以降にも引き継がれる。
遺伝子を変えたことによるメリットとリスクを、まだ生まれてもいない子どもと子孫が負うことになる。当然、本人の同意はない。
今回の場合、前述したHIV感染に関わる遺伝子の機能を失わせ、HIVに感染しにくくしたとされている。では、リスクには何があるのだろうか。
後篇では、技術的、医学的、倫理的観点から問題をまとめ、今回の騒動の本質に迫る。
(後篇につづく)