本書を読み込んだ歴史家やナチス研究家たちは異口同音に「別に驚くべき新事実が出てきたわけではない」という点は一致している。
だが、オライリー氏という保守派大物ジャーナリストが今なぜ、「ナチス・ハンター」について世に問おうとしたのか。
アマゾン・ドット・コムの「読者感想」には、馬に食わせるほど称賛するコメントが殺到している。
「平易な文章で感情的にならずに淡々とナチスが何をやったかについて改めて世間に伝える教育的な1冊だ」(ユダヤ系米人の高校教師)
「テレビで正論を述べるオライリー氏が書いたナチスものだけに親しみを感じる。子供たちの教科書にすべきだ」(共和党支持者の主婦)
「ナチスの紋章には悪臭と血が染みついている」
最後にBTS騒動に戻る。
何人かの米国人に意見を求めた。その1人、ロサンゼルス在住のホロコーストを逃れて米国にたどり着いた高齢のユダヤ人女性(元大学教授)は筆者にこう語った。
「SSの記章や軍服にはナチスの蛮行の悪臭と血が染みついている。だからそれをどこの国の若者であれ、クールだなどと身に着けていることは絶対に許せない」
「先進国の若者であるならばなおさらだ。ナチスについてだけではない。きのこ雲の写真をTシャツに印刷しておどけるなんて・・・」
「指摘されて初めて謝罪するなんて許されない。そういう若者がいる国は決して世界から尊敬などされない」
「その国の大統領がいくら世界平和だとぶっても誰も信用しない。世界から相手にされるわけがない」
もっと怖いのは、そうした軽薄な世界観しか持たない若者のパフォーマンスがこれほど世界でもてはやされていることだ。
少なくともハリウッドの俳優たちにはその程度の節度も常識もある。これも欧米とアジアとでは歴史観が違うからなのだろうか。