韓国や台湾は「ホロコーストには無関心」

 スウェーデンに本部を置く「Institute of Security and Develpement Policy」のエリオット・ブレナン氏*1は、アジア諸国の一般庶民のナチスやホロコーストについての常識と、欧米のそれとは大きな隔たりがあるとしている。

*1=ブレナン氏はアジア全体の社会、文化について現地調査研究し、欧米の文化と比較研究してきた専門家である。

 ブレナン氏はこう指摘している。

 「ナチスに対するアジア人と欧米人との認識には大きな隔たりがあるのは、第2次大戦史観が異なるためだ」

 「ここ10年、韓国や台湾、インドネシアではナチスの服装をしたり、SS帽子(ナチス親衛隊の帽子)を被ったりしてパフォーマンスやパレードを行う傾向が目立っている」

 「その理由は、アジア人にとって第2次大戦はナチスとの戦いではなく、日本帝国主義との戦いだという認識が植えつけられてきたからだ」

 筆者の認識でも東アジアや東南アジアの小中高ではナチスについてはあまり教えていない。そのため若者はよほど教育程度が高くない限り、ナチスやホロコーストについては知識がない。

 とりわけにエンターテインメント業界などで働く人にはナチスに対する正確な認識など望む方が無理なのかもしれない。ブレナン氏は続ける。

 「若者の間にはナチスやSS帽子は特別な意味はない。アジアの若者にとっては反体制的であり、現状打破的でクールで格好いいものと受け取られている」

 「いわゆる『パンクカルチャー』(パンク・ロックを中心に発生したサブカルチャー)なのだ」

 「韓国では2014年にもポップグループの『Pritz』がSSを連想させるブラックスーツを着て歌い、踊るビデオを製作して欧米では問題になったことがある」

 「そうした背景にはナチスを知らない国際的非常識が韓国には存在していることを意味していた」