なぜ太くなる? 大根の謎をゲノム解析で明らかに

白くて太い野菜の多様性に迫る(後篇)

2018.11.16(Fri)漆原 次郎

「ところが、太らない品種でも、同じ酵素が活性化していたのです」

 太る・太らないの違いには、どうやら別の仕組みがあるようだ。

「詳細な解明はこれからですが、根の構造に鍵があると考えています。太らない品種では、皮のあたりが分厚くなって、根の肥大化を抑えているようです。また細胞壁が発達して固くなることで、細胞そのものの肥大化も抑えているようです」

 今後は、これらの働きを司る遺伝子を突き止めていくことになりそうだ。

「鍵となる遺伝子は複数あると見ています。太る品種と太らない品種を交配すると中ぐらいの太さになりますから。1個の優性(顕性)・劣性(潜性)の遺伝子では太さが決まらないことを示しています」

遅咲きの遺伝子変異を特定、品種改良にも光

「遅咲き」の遺伝子を突き止める研究も、三井氏は進める。

 大根は、花を咲かせると、根を太らさない。では、どんな条件で大根が花をつけるかというと、低温をのべ2~3週、経験するというもの。農家にとって深刻なことに、種まき後に低温が続くと、大根がすぐ花を咲かせてしまうのだ。根が太らず作物としての価値がなくなる。

 そこで育種家たちは、交配で「遅咲き」品種を開発した。寒さに当たっても花を咲かせない品種が実現したわけだ。

「それを可能にする遺伝子を、明らかにしようと考えました」

 ダイコンを含むアブラナ科の植物が花を咲かせる仕組みを巡っては、FLCFlowering Locus C)という遺伝子の存在が知られている。「花成抑制遺伝子」とも呼ばれ、文字どおり、花が成るのを抑える働きを持つ。低温が続いてこの遺伝子の働きが鈍ると、下流の開花を司る遺伝子が抑制から解かれ、花が咲くのだ。

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