なぜ太くなる? 大根の謎をゲノム解析で明らかに

白くて太い野菜の多様性に迫る(後篇)

2018.11.16(Fri)漆原 次郎

 ダイコンゲノム解読完了が最近だったというのは意外だろうか。植物のゲノム解読には難しさもある。三井氏はこう話す。

三井裕樹(みつい・ゆうき)氏。東京農業大学農学部生物資源開発学科准教授。博士(人間・環境学)。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了後、東京農業大学農学部へ。バイオセラピー学科助教、准教授を経て、2018年4月より現職。専門分野は生物多様性・分類。東京農業大学が公開しているダイコンゲノムのデータベース「NODAI Radish genome databese」の構築・運営も担う。

「ダイコンを含むアブラナ科の主要作物は、過去にゲノム3倍化を経験しています。ゲノムに同じ配列をした部分がたくさんあり、シーケンサーという解析装置が見分けづらかったのです」

 ゲノム3倍化とは、その生物の持っている1種類のゲノムが3倍になること。進化の過程でまれに起きる。これで1個だった遺伝子が、3個あることに。ゲノムをパーツごとに読み取ってつなげていくことで全体解読を目指す研究者にとって厄介なことに、どこにでもつながりそうなパーツが散らばっているわけだ。

 だが、シーケンサーも進歩する。より長大にパーツを読めるようになり、パーツの固有性が高まって紛らわしさが減った。ついにダイコンゲノム解読完了に至ったのだ。

根の肥大化を抑える遺伝子に迫る

 三井氏らが解読したダイコンゲノムは、作物品種としてシェアの高い「青首系」のもの。モデルの設計図を得られたことで、他の品種との設計図の違いを調べられるようになった。現れている特徴の違いが設計図のどの部分の違いによるものか、つまりどの遺伝子の違いによるものかを突き止めていけば、大根の品種がどう枝分かれし、多様化していったかを具体的に明らかにできる。

 三井氏はまず、青首系をモデルに「どのように根が太るのか」「根が太る種と太らない種の違いは何か」を探っていった。

「ダイコンが光合成で得た糖は、葉から根に下りてきますが、その糖をデンプンに変える酵素のひとつが働くことが、根の肥大化と強く関係していると分かりました」

 となると、太る・太らないの違いは、糖をデンプンに変える酵素を活性化させる遺伝子が働くかどうかということか・・・。

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