南沙諸島だけでなく、かねてより中国が実効支配を続ける西沙諸島でも、「アメリカのFONOPにより軍事的脅威が強まった」との理由で、防衛のための対艦ミサイルや対空ミサイルが持ち込まれている。
要するに、アメリカ海軍が南シナ海に軍艦を派遣しFONOPを実施しても、結果的には何の成果も挙げられなかったのである。
経費節減が図れる「爆撃機によるFONOP」
とはいえ、FONOPを中止して、中国による南シナ海や東シナ海の軍事的支配が強化されていく状況を放置することは、アメリカ政府にとってはできない相談である。
そもそもFONOPは、公式には、国際海洋法秩序を守るための活動である。表面上は中国の軍事的膨張主義を封じ込めるためではなく、国際海洋法秩序を脅かす勢力に対して断固として反対する立場を示すために実施している。だからこそ、国際海洋法秩序の根幹である「公海航行自由原則」の維持が作戦名となっているのだ。
だが、1カ月おきに軍艦を南シナ海に派遣して何の成果も上がらないのでは、経費がかさむだけである。ビジネスマンであるトランプ大統領にとっては、コストパフォーマンスは純軍事的効果より大切だ。そこで、軍当局は南シナ海上空や東シナ海上空でのB-52爆撃機の示威飛行を繰り返した。この方法だと、軍艦によるFONOPの数分の1のコストで、アメリカが国際海洋法原則維持の守護神であることをアピールできる。9月下旬、アメリカ空軍B-52爆撃機が南シナ海上空を飛行して、上空からのFONOPを実施した。