やはり軍艦によるFONOPも必要

 ただし、経費節減にはなるといっても、中国が領有権を主張している海域内(すなわち領海に相当する海域)を航行する軍艦によるFONOPと違って、B-52爆撃機を、中国が領有権を主張している島嶼環礁の直上(すなわち領空に相当する空域)を飛行させることはない。

 また、B-52爆撃機が核爆弾をはじめとする各種爆弾を積載できるとはいえ、南沙諸島や西沙諸島に接近して中国側に軍事的圧力をかけようとは、アメリカ側としても考えてはいない。

 大型かつ低速でステルス性もゼロのB-52爆撃機は、多数の戦闘機や対空ミサイルシステムを取り揃えている中国軍にとって、いつでも撃墜可能な存在だ。また、それ以前に、中国軍がB-52を撃墜することも、米空軍がB-52で南沙諸島や西沙諸島を爆撃することも、戦時ではない現状においては起こりえない。

 要するに、B-52爆撃機による南シナ海や東シナ海での示威飛行が、「アメリカ政府としては何もやらないわけにはいかない」ために形式的に実施しているデモンストレーション飛行であることは明らかである。軍艦によるFONOPに比べて経費節減にはなるものの、さらなる実質的な効果は望めない。したがってB-52爆撃機によるFONOPを駆逐艦によるFONOPに取って代わらせることはできない。

 B-52爆撃機によるFONOPには、他の問題もある。4カ月も南シナ海に軍艦を派遣せず、爆撃機を飛行させただけで格好を取り繕うとする状況は、トランプ大統領が批判していたオバマ大統領と同じく中国に対して腰が引けているとみなされかねないということだ。