人はなぜその人のことが好きになるのだろう? 好きな人に容姿が似ているだけで、その人のことも好きになるのか。それともそれはただの偶然か。好み、タイプだからだろうか。外見が近くても中身がまるで違う人を同じように愛せるのか。その人は誰かの代わりなのか。まるで山口百恵の「イミテイション・ゴールド」の歌詞を思い起こさせる展開は、一生かかっても、解けることのない謎。だが、問題はこの後の朝子のアクションにある。
恋愛にも保守的になってしまった若者たち
若い女性たちの多くは「朝子、ひどい」「亮平がかわいそう」「どうして?」となってしまうらしい。彼女たちは、抑えきれない衝動や理屈じゃない気持ちを恋愛ならではの行動や感情とは受けとめない。ヒロインを演じた唐田えりかは現在20歳。彼女自身も、友人たちから「どうして、そんな気持ちが理解できるのか」と質問されたことがあるらしい。
他人に迷惑をかけてはいけない。突飛な振舞いは控える。いまの若い世代は保守的で知られている。恋愛においてもそれは例外ではなかったようだ。
不倫スキャンダルがどれも問答無用にバッシングされるのも、富豪社長とタレントの恋バナ合戦が大炎上するのも、「配偶者の気持ちを考えたことがあるのか」「衝動的に何かをするなんて、みっともない」とする保守世代が中心になった世論なのだろう。「だって恋しちゃったんだもん!」という理由はいまの世の中、決してまかり通らないのである。
年配の人のなかには、拒否派の子たちは「若いから恋愛というものをまだよく知らないのではないか」という見解の人もいる。
そうなのだろうか。
80年代『ベティ・ブルー 愛と激情の日々』というフランスの恋愛映画が世界中でヒットし、日本でも大ブームを巻き起こした。自由奔放な美少女ベティが相手を愛するあまり、暴走してしまい、最終的には破滅へと突き進んでいくストーリーである。
このお騒がせなベティに対して、当時の若い女の子は「けしからん」となっただろうか。決してそうはならなかった。多くの若い女性は「いつかこんな大恋愛をしてみたい!」と夢を見て、「これが映画か、これが恋愛か」と心酔したものである。
それが時代が変われば、大胆過ぎるヒロインの行為は映画であろうと、恋愛であろうと「許せない」となってしまうわけで、現在の若い世代の生真面目さには驚かされるばかりである。