前回、択捉島で資源が見つかったレニウムがどのようにジェットエンジン・ガスタービンで重要な役割を果たしているかを説明した。
確かに、レニウムはジェットエンジン・ガスタービンの性能向上に不可欠であり、産業界だけではなく、空軍でも必要としている。
本当に択捉島で年間36.7トンものレニウムが生産できる資源があるとすれば、それは経済的意味だけではなく、軍事的、政治的意味を持つかもしれない。日本側から見て領土交渉に悪影響を与えそうに見える。
しかし、金やプラチナよりレアで、世界でも年間50~60トンしか生産も消費もされないような金属が、本当に択捉島だけで36.7トンも作れるのだろうか。
今回は、択捉島のレニウムの実態に迫っていく。
択捉島のレニウム資源の正体
択捉島でレニウム資源らしきものが発見されたのは、1990年代である。択捉島の北端に近い硫黄岳(クドリャヴィ火山)でレニウムを主成分として含む鉱物が見つかった。
地質の世界の常識では、レニウムは希少過ぎるので、他の鉱物の不純物としてしか存在しないと考えられていた。専門家の間では大騒ぎになった。
レニウムの鉱物は、火山の噴煙から発生したものであった。この噴煙はレアな金属としては高濃度でレニウムを含むことが推測された。
しかし、レニウムの鉱物の量は知れていた。また、噴煙も学問的な意味では高濃度のレニウムを含むかもしれないが、産業的に利用できるほど高濃度と考えた人はほとんどいなかった。