米朝首脳会談の開催国シンガポール、負担費用は13億円超

シンガポール・セントーサ島のカペラホテルで開かれた首脳会談に臨む米国のドナルド・トランプ大統領(右)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(2018年6月12日撮影)。(c)AFP PHOTO / POOL / Anthony WALLACE〔AFPBB News

 初の米朝首脳会談は、共同声明に署名し終了した。しかし、最大の焦点であった北朝鮮の非核化については、何ら具体的進展はなく、その後の交渉でも実質的な進展は見られない。

 米朝会談で何がもたらされるのか?その背景には何があるのだろうか?

1 事実上の北朝鮮の核保有黙認に等しい米朝合意

 共同声明には、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の「朝鮮半島の完全な非核化に向けた決意」の再確認と、その見返りとしての、ドナルド・トランプ米大統領による、北朝鮮に対する体制の「安全の保証」の約束という文言が盛り込まれた。

 しかし、「朝鮮半島の完全な非核化」との表現は、「板門店宣言」と同じ内容であり、米国が主張してきた「北朝鮮の非核化」ではない。

 他方、トランプ政権が譲らないと主張してきた、「完全な検証可能かつ不可逆な非核化(CVID)」という文言は共同声明に盛り込まれなかった。また、非核化の検証方法も期限も示されなかった。

 北朝鮮に軍事力を行使して非核化を強要するとした場合、一番厄介な問題は、北朝鮮がすでに約1000発の移動式弾道ミサイルを地下基地などに保有しており、先制攻撃による一挙制圧は不可能で、いかなる軍事選択肢に対しても反撃可能とみられることである。

 ミサイルの弾頭には、1発で数十万人から百万人以上の惨害を与えられる、核・化学・生物など大量破壊兵器が搭載されているとみられる。

 1000発のうち約450発ずつが韓国と日本を攻撃可能で、残り約100発もグアム、ハワイ、さらに数発以上の大陸間弾道ミサイル(ICBM)は、米本土を攻撃できる能力を持っているとみられる。

 数十発をおとり弾頭も含め、同時連続発射されれば、ミサイル防衛システムでも全数撃破は困難であろう。

 通常戦による惨害に加えて大量破壊兵器による損害を加えれば、日本と朝鮮半島、場合により米国も含め、最悪の場合数千万人の「かつてない破滅的な惨害」を招く恐れがある。

 この点はトランプ大統領も首脳会談後の記者会見でも言及している。

 そのリスクを考えると、もはや大量破壊兵器による報復を招く恐れのある軍事的選択肢は採れない。