写真1 エンジンを吹かして飛ぶロシア空軍機。このエンジンに必須なレアメタルが択捉島にある。

 北方領土にレアメタル資源。しかも戦略物資。よりによって揉めている場所に、さらにお互い譲れなくなるような資源が見つかる。まるで、人間をわざと余計に争わせるために、狙ってやったかのような自然のイタズラである。

 ここ数年、領土問題解決を目指した日露首脳会談が続いてきた。つい先月にも、サンクト・ペテルブルクでの経済フォーラムの際に首脳会談がなされている。

 2015年冬以降、その首脳会談と平行するかのように、択捉島にレニウムなるレアメタルがあるという報道がされてきた。しかも、その量は世界の年間使用量の半分以上である。加えて、このレニウムは、軍事に用いられるという。

 資源に乏しいゆえにいろいろ痛い目にあってきた日本としては、レアメタル資源などと聞くと、喉から手が出るほど欲しくなる。一方、戦略物資となると、ロシアも手放せないのではないか。報道でもこのレニウムは領土交渉の障害になるものと扱われた。

 その後、続報がないため、択捉島にレアメタル資源が存在するということが、日本でも広まった状態でいる。

 実際、金属資源や北方領土に感心の高い方から問い合わせを受けることがある。また、ロシアでも年間36.7トンのレニウムが生産可能として、投資プロジェクトになっている。

 本当にそのような量のレニウム資源があるのなら、もっと注目されていいくらいだ。

 北方領土交渉に目に見える進展はないが、実はレニウム資源がその原因だったということもあり得るからだ。しかし、あくまでも本当の話ならである。実態はどうなのかということに迫ってみたい。

マニアック過ぎる金属レニウム

 レニウムとはどのような金属であろうか。この金属の名前でピンとくる方がいらっしゃれば、特殊な業界でご活躍の方か、好奇心が極めて旺盛な方である。高校までの化学の授業で出てくるような金属ではないし、存在量は金やプラチナより少ない。

 普通の金属であれば、金の鉱石とか鉄の鉱石というものが存在するが、レニウムの鉱石は存在しない。鉱石が存在しないほどレアなのだ。

 銅やモリブデンの鉱石に不純物として含まれるレニウムが、銅やモリブデンを精製する際のの副産物として製造されている。