そこで、経営者である私が、そのときに考えていることを音声で収録して、社員各自のスマホに配信する仕組みをはじめました。ただし5分間だけ。5分より長いと聞く方も疲れてしまうからです。長く話したい時は翌日に繰り越します。

 社員は自分の都合のいいタイミングで聴くことができるので、家事をしながら、散歩しながら、というように「ながら」で聞いてもらえます。音声配信は、直接話しかけるのと同じ効果があって、抑揚や声のトーンで感情まで伝えることができます。声で聞いていると、実際は会ってないのに会った気になるのも良い効果です。

 この仕組みを「社長ラジオ」と呼んでいます。さらに社長ラジオの良い点は、社員の人数が増えたところで手間が変わらないことです。これがテクノロジーの力です。

経営判断の経過が見えれば納得感が変わる

 会社を経営するうえでは、様々な経営判断が行われます。熟考を重ねて、経営陣での議論を経て決められた戦略や方針は、現場に共有されることで実行されます。

 上意下達での情報伝達の問題は、その決定された内容について納得がいかないことがあっても社員は飲み込むしかないことです。どれだけ経営陣によって熟考された戦略でも、現場からすると突然の決定に思えてしまい、それが納得いかない原因になります。

 私たちは前述の社長ラジオに加えて、社内のコミュニケーションツールが備える掲示板という機能の中で、経営陣の会話もオープンに見えるようにしています。トピックに対してコメントをしていくツールなので、会話の過程を見ることができます。そこに書かれていることは決定事項ではなく、途中経過なので、決まりかけたことが覆ることもよくあります。

 経緯が見えているかどうか、経営陣が何を問題と感じていて、どういうアプローチで考えていたのか、それがわかっているかどうかで、方針が示されたときの納得度合いは大きく変わってきます。