さらに、米IT企業4社が合計4155億円出資しているのに議決権なし、というのもよく分からない。もっと言うと、3950億円を融資するメモリメーカーのSK Hynixがこのまま大人しくしていてくれる保証はどこにもない。この買収スキームが決まる直前に、SK Hynixの会長が来日し、「単なる融資では終わらない」というようなことを言っていた記憶があるが、今後の火種になりはしないか?
成毛社長に権限を集中させよ
東芝メモリの売却スキームは、分からないことだらけである。東芝メモリのボードメンバーには、少なくとも、東芝、HOYA、ベインの役員が並ぶことになる。そして、ここに、米IT企業4社、SK Hynix、融資した銀行団、さらには革新機構や政策投資銀行が口を出し始めるかもしれない。
この経営体制で、迅速で果断な設備投資の判断が下せるのだろうか?
2016年末から今日まで、東芝が混乱の極みにありながらも、東芝メモリは何とかシェアの低下を食い止め、売上高を20億ドルから30億ドルに増大させてきた。この要因は、NANDが作っても作っても足りない状態にあり、作る端から高値で売れる強烈な追い風が吹いていたこと、そして現場の技術者たちが踏ん張っていたことにある。
今後、東芝メモリは、NANDメーカーの中で最も低い成長性という本質的な問題を打破し、サムスン電子に追いつくために、思い切った巨額投資を行う経営判断が必須である。東芝メモリのボードメンバーには、成毛康雄社長に権限を集中させ、自由に迅速に大胆な経営判断が下せる体制を確立できるよう尽力していただきたい。