(4)日米韓連合による東芝メモリの買収に中国が難色

 さて上記のように、米国が2発パンチを繰り出し、中国が1発お返しした状況で、5月末に、東芝メモリの売却に関する中国での独禁法の期限を迎えようとしていたわけである。ことと次第によっては、中国が2発目のパンチをお見舞いすることが想定された。

 では、もし、米ベイン率いる日米韓連合が東芝メモリを買収したら、どのような損害を中国が被ることになるか。

 東芝メモリのNANDの多くは、中国のスマホに搭載されていると聞いている。ところが、日米韓連合に買収されると、その中の米アップルや米デルが東芝メモリのNANDを独占し、ファーウェイやZTEへのNANDの供給を制限する可能性がある。

 ということを考えると、中国が独禁法の審査で「NO」を突きつけるのではないかと筆者は予測せざるを得なかった。

 そして、筆者が予想していたことが起き始めた。4月22日に毎日新聞が、「東芝は、東芝メモリの売却について、5月末までに独占禁止法の審査で中国当局の承認が得られなければ、売却を中止する方針を固めた」と報じたのだ。

 これに対して東芝は翌日の4月23日に、「当該期限については当社から公表したものではない」「特定の条件下での、売却取りやめを含むいかなる具体的な方針も決定していない」とコメントしたニュースリリースを公開した。だが、毎日新聞の報道は、的を射ていたと思う。その証拠に、日経新聞が5月22日、『幻のメモリー温存案』という記事で、「2017年8月10日午前、東芝本社で開いた取締役会。綱川の不意の発言に、場の全員が息をのんだ。『メモリーを売らないプランBという選択肢もある。会見でそう説明したい』」ということを報じたからだ。

米国と中国は取引をしたのか?

 2018年5月末までに、中国が独禁法の審査で許可を出さなければ、東芝は東芝メモリを売却しなかった可能性が極めて高かったのだ。

 しかし、現実には、中国が期限より10日以上早い5月17日に、独禁法の審査に許可を出した。