2010年以降のシェアを見てみると、何度となく、東芝メモリがサムスン電子に肉薄している時もあった。しかし、東芝メモリのシェアはジリジリと減少し、結果的に倍半分の差がついてしまった。といっても、原子力事業の巨額損失が発覚した2016年第4四半期以降、東芝メモリは、何とかシェアの低下に歯止めをかけ、サムスン電子の半分程度に踏みとどまっている。ここから、東芝社内が大きく揺れ動く中、四日市工場の東芝メモリの社員たちは奮闘していた姿が浮かび上がる。

 しかし、実は、東芝メモリの本質的な問題はここにはない。では、何が問題なのか?

NANDメーカーの成長率

 各NANDメーカーの2010年第1四半期の売上高を「1」と規格化して、その後の成長率をグラフにしてみた(図4)。このグラフから、東芝メモリの本質的な問題点を指摘することができる。

図4 2010年Q1で規格化したNAND売上高の推移
出所:statistaのデータを基に筆者作成

 2010年第1四半期から2018年第1四半期の間に、NANDメーカーの中で最も成長しているのはSK Hynixで、2017年第4四半期には5.22倍に成長していることが分かる。

 次に、サムスン電子、米マイクロン・テクノロジー、米インテルが、それぞれ約3.5倍に成長していることが分かる。

 ところが、東芝メモリだけが、2倍程度にしか成長していない。つまり、NANDメーカーの中で、東芝メモリの売上高の成長率が最も低いのである。これこそが、東芝メモリの本質的な問題である。

 では、なぜ、東芝メモリの売上高の成長率が低いのか。答えはシンプルで、設備投資が低調だからだ。それゆえ、東芝メモリを買収したベイン率いる日米韓連合には、迅速で果断な設備投資を行ってもらいたい。