2017年がもうすぐ終わろうとしている。思い返せば、2016年12月末、東芝の原子力事業で5000億円を超える巨額損害が出ることが発覚し、年が明けた2017年は、東芝(メモリ)問題が1年間にわたって世間を騒がせ続けた。
筆者は、東芝(メモリ)問題を追いかけ続け、100本を超える記事を書きまくってきた。10~11月頃になると、いささか食傷気味となり、東芝(メモリ)の記事を書くことに苦痛を感じるようになっていた。
しかし現在、東芝(メモリ)問題は、ほぼ決着した。
4月1日に分社化した東芝メモリは、二転三転した末に、米ベインキャピタル率いる「日米韓連合」が約2兆円で買収することになった。この買収資金は、東芝メモリをスルーして東芝に渡り、東芝の債務超過の相殺に使われる。これに対して、ベインは、東芝メモリのNAND型フラッシュメモリのために、新たに3年で2兆円の設備投資資金を掻き集めてくることになった。
また、この買収を完了させるためには、各国司法省のおける独占禁止法の審査を受けなくてはならないが、特に中国での審査に時間がかかっており、2018年3月末に間に合いそうもない。すると、東芝は2年連続で債務超過に陥り、東証から退場を命じられることになる。
そこで、米ゴールドマン・サックス証券が「ヘッジファンド」(物言う株主)を60社集め、機関投資家に新株を割り当てる第三者割当増資を行う手法により、東芝は6000億円の増資を行うことに成功した。東芝は、この6000億円で米原子力事業の負債を一括返済することにより、最低2400億円の税負担軽減による純利益の増加が見込める。その結果、東芝が抱えている7500億円の債務超過は、6000億円+2400億円=8400億円の純増により、900億円のプラスに転じる。つまり、東芝メモリの売却が間に合わなくても、上場を維持できることになった(参考:「東芝増資仕切った豪腕ゴールドマン 海外60社まとめる」日本経済新聞、「焦点:東芝の巨額増資、GS独り勝ちの衝撃 新たな火種警戒も」ロイター)。