(1)米国がブロードコムによるクアルコム買収を禁止

 まず、3月12日に米トランプ大統領が、「大統領令」を発令して、ブロードコムによる米クアルコムの買収を禁止した。

 現在のブロードコムは、シンガポールに本社があるアバゴ・テクノロジーが2016年に米ブロードコムを370億ドルで買収した会社である。買収したアバゴより、買収されたブロードコムの方が会社名のブランド価値が高かったこともあり、ブロードコムと名乗ることになった。

 その新生ブロードコムが、1170億ドルで米クアルコムに対して買収を提案した。しかし、クアルコムと中国最大のスマホメーカーのファーウェイが、次世代通信5Gを巡って規格争いをしていた。ここで、もし、クアルコムが新生ブロードコムに買収された場合、5Gの通信規格を中国側に握られる危険性があると、米国側が判断した。

 新生ブロードコムは、「本社をシンガポールから米国に移す。したがって我が社は米国籍である」と主張していた。だが、米国側は、新生ブロードコムの本性は中国寄りであると見ていたのである。

(2)米国がZTEに対して輸出規制

 次に、米商務省は4月16日、米中国のスマホメーカーZTEに、インテルやクアルコムの半導体チップの輸出を7年間禁止する決定を下した。その理由は、ZTEが2010年から2016年に掛けて、米国の輸出規制に違反し、イランや北朝鮮にスマホ等の通信機器を輸出していたからである。

 このような輸出規制は、スマホの出荷台数でアップルやサムスン電子に次いで世界第3位に成長した中国最大のスマホメーカー、ファーウェイにも適用される可能性もあった。

(3)中国がクアルコムによるNXP買収に難色

 米国側から2回にわたりダメ出しを食らった中国は、報復措置に出た。クアルコムは、2016年10月に、オランダのNXPセミコンダクターを440億ドルで買収することで合意していた。後は、各国の独禁法の審査待ちとなり、残すは中国一国だけになっていた。

 クアルコムは通信半導体メーカーであり、NXPは車載半導体メーカーである。クアルコムは、自動運転車の分野への進出を目指して、NXP買収を提案した。同じ半導体と言っても、分野が異なる2社間の買収であり、独禁法に抵触する可能性はほとんどない。

 ところが、中国商務省がこの買収に突然待ったをかけた。その結果、クアルコムは4月19日、中国への独禁法の再申請をする羽目になった。明らかに、米国に対する中国の嫌がらせであると思われた。